Interview #1

IJT出展をきっかけに
マンションの一室から海外市場へ

宝石や貴金属の卸業を営む、有限会社ジュエルアイマス。2015年に入社して2カ月目だった藤田 慎之介さんとの出会いをきっかけに、同社はRX Japan主催の「国際宝飾展(IJT)」に出展することになりました。
IJTへの出展を通じて、同社のオーナーである渋谷氏は海外バイヤーとのネットワークを構築し、宝石の卸業としての基盤を築くことができました。本記事では、藤田さんが渋谷社長と出会い、絆を築くまでのストーリーをご紹介します。

◆藤田 慎之介さん プロフィール
2015年に新卒入社。入社以来、国内企画営業として出展企業の営業や、マーケティング担当を経て、現在は国内企画営業統括。
現在の担当の展示会は、国際宝飾展(IJT)、TOKYO JEWELRY FES

◆有限会社ジュエルアイマス 渋谷 健司さま プロフィール
有限会社ジュエルアイマス、オーナー。
マンションの一室から世界へ。1990年、父親が創業した会社を引き継いで社長へ就任。
老舗の多い業界のなかで、新興企業ながら自社でデザイン・生産した新品も手がけ、宝飾業界で名をはせる存在へと成長。
現在、中古品だけでなく、新品の宝飾品へと事業を拡大している。



1通のDMから出会いが始まる  

―お2人の出会いはいつ頃だったのでしょう?

藤田: 渋谷社長との出会いは、私が入社して2カ月の2015年7月頃でした。まだ新人だった私が自分で作った“国際宝飾展(IJT)”のダイレクトメールを見て、直接お電話をいただいたことがきっかけです。

渋谷: ちょうど、エンドユーザーへの直接販売から、卸業を主体とした事業へ転換しようかと悩んでいたころでしたね。私たちが宝飾品事業の扉を開いたのは2004年ごろ。宝飾業界は歴史ある企業が多いのですが、私たちはまったくの新参者。とりあえず2、3年は勉強のつもりで、中古品をオークションで仕入れて、ECサイトを使ってエンドユーザーに直接販売していました。もちろんIJTは国内最大の見本市なので知っていましたが、出る必要はありませんでした。
IJTはエンドユーザーではなく、ショップなどのプロが来場する場ですから。ただ、オークションに出続けていると、いろいろ見えてくるんですね。
オークションで何十倍も仕入れる会社があって、「あれだけ仕入れて、どうやって売るんだろう」と疑問に思っていました。当然、そのような力を持つ会社がオークションでも優位な試合運びをするわけです。私たちもいい仕入れがしたい。話を聞いていくうちに、力のある会社は、卸業に徹していることがわかった。なるほど、私たちも事業を安定拡大させていくには、卸業へと進化していく必要があると感じました。

藤田: エンドユーザーではなく、小売店やバイヤーさんに販売するわけですね。

渋谷: そうです。宝飾品の日本市場がシュリンクする中で、ECサイト販売だけでは厳しい。売り先も海外へ広げていく必要がありました。ただ、卸業へ進むには、バイヤーとのネットワークが必須です。バイヤーとのつながりをつくるにはIJTに出たほうがいいかなあと。悩んでいたときに、藤田さんからのDMが届いたわけです。

藤田: 渋谷社長と電話で何度かお話しした後に、一度 名古屋まで会いに来てほしいとのご要望をいただいて。入社2カ月でしたが、上司に出張の許可をもらって、名古屋まで飛んで行きました。

「ジュエルアイマス」はジュエリー、宝石、宝飾品などの販売・卸売・海外輸出入を行っている。


ジュエルアイマスにとって、大きな決断のとき
藤田さんの熱意でIJT出展を決意

―渋谷さまが藤田さんと直接会いたかったのはなぜでしょうか?

渋谷: 名古屋の同業は、誰に聞いても「国際見本市なんてやめておけ。小さく手堅くやったほうが賢いよ」と言うんですよ。たしかに市況も厳しい時期でしたから、それもそうだなと思っていました。しかし一方でアジア経済が上向きになってきて、中国人バイヤーも増えていました。海外バイヤーとのつながりをつくることができれば、卸業としてビジネスを飛躍できる。だからIJTに出るべきかどうか、真剣に悩んでいました。これからのジュエルアイマスにとって、大きな決断のときだった。だから、どうしても藤田さんに直接会って決めたかったんです。

藤田: IJTに出れば、海外のバイヤーさんも含めて、多くの来場者との商談の機会ができます。これは国際見本市の大きな価値ですね。ネットワークを築くには、まさにベストです。そして最初だからこそ、ジュエルアイマスというブランドを認知させることが必要だと考えました。そのためには、初回は可能な限り大型ブースにして、存在感を出したほうが絶対にいいと思った。渋谷社長には、生意気ながら「小さなブースでやらないほうがいいです。どうせやるなら大型で名前を売りましょう」とお伝えしました。

渋谷: 私も藤田さんの話を聞いて腹を決めました。IJTに出よう。出るからには、1,000万円ほどの投資をしても、一番大きなブースで出そうと。藤田さんも、真剣に私たちの未来について考えてくれていると感じました。出展の決め手は、藤田さんの熱意ですね。

藤田: ご契約をいただいたときは、社長が私に賭けてくれたんだと思って、うれしかったですね。同時に、私も新人でしたから、初めてのお客様といっしょに大きな夢を見られる気がして、わくわくしました。たしか、このマンションのリビングで、みかんを食べながら話しましたね。懐かしい。

渋谷: 2015年、いよいよIJTへ出展。私たちにとって初めてということもあり、相当気合いを入れて、3億円ほどの商品を持って行きました。出るからには、たくさん売りたいですし、多くのバイヤーさんとつながりをつくりたいと。

藤田: 私も気になって、気になって。なんどもブースの様子を伺っていました。でも、たくさんの来場者さんと商談で忙しそうにしている社長を見て、ひとまずほっとしたのを覚えています。

渋谷: すごい活気で、IJTのすごさを実感しました。結果的に、3日間で8,000万円ほど売り上げることができ、利益も確保できた。特に海外のバイヤーとの出会いは大きかったですね。小さなマンションで一生懸命扱ってきた自分たちの製品が、まさに世界に飛び出していくきっかけとなった。非常に満足いく結果を残すことができたと思います。私は数字で結果を出すことが、藤田さんへの感謝だと思っていました。だから藤田さんに「ありがとう」とダイレクトに言葉では言いませんでした。

藤田: あれ?「藤田くん、ありがとう」って、がっちり握手しましたよ(笑)。

渋谷: あまりに興奮して、忘れてしまっていたのかも(笑)。とにかく売上数字も満足でき、多くの海外バイヤーとつながることで、卸業としても好スタートを切れたと思います。また、実際に展示会場を見て回るなか、どういったデザインや石が好まれるのか、いくらぐらいで取引されるのかなど市場調査としても役に立つと感じました。

藤田: 実際に売上に結びつくだけでなく、世界中から1,000社を超える企業が出展しているので、最新情報を得るための絶好の機会にもなります。これもIJTの価値提供のひとつなんです。

渋谷: そこから現在まで、IJTにはずっと参加させてもらっています。2018年だったかな、藤田さんから提案があり、「今度は、東京だけでなく、地方でも出展する戦略に変えませんか」と。それまでは、年1回の参加でしたから。

藤田: IJTは、東京、横浜、神戸と年3回開催しています。最初は、ジュエルアイマスというブランドを売り出すために東京での出展が必要でした。ただ、3年ほどたって、バイヤーへの認知度も高まってきた。4年目からは、地方での展示会も積極的に活用することで、さらに認知度を高め、利益の拡大につながると考えました。

渋谷: 藤田さんから「名前は売れたので、さらに利益をとりに行きましょう」と。たしかに、回数を重ねたほうが、利益は出る。また、年に一度バイヤーと会うよりも、年3回会ったほうが情報交換もできるし、付き合いの密度が濃くなる。なるほどと、藤田プランに乗ってみようと決めました。

藤田: 宝飾の世界は、名前が売れてくれば、それにともなって売れていくという傾向がありましたから。

渋谷: おかげさまで、利益も順調に確保できています。卸業としての基盤を固めつつ、次の分野へと夢は膨らんでいます。


ジュエルアイマスに、
“IJTの顔”となってほしい

―今後の展望を教えてください。

藤田: 次は、中古から新品への挑戦ですね。

渋谷: そうですね。これまで中古品の卸、販売をやってきましたが、新品への展開を始めています。新品は、中古品とはまた別の世界。カラーストーンを輸入して、自社でデザインして、売り出すわけですから。そのために提携工場を増やしたり、デザイナーを採用したり、社員といっしょに勉強しているところです。

藤田: IJTの出展も、新品のジュエリーゾーンに進出されました。でも、中古品で十分に成長している中で、なぜ新品へと広げられたのでしょうか。

渋谷: そうですね。私は、“本物の宝石商”になりたいんです。それには、中古品も新品も扱えないと本物とは呼べない。カラーストーンやデザインのことをもっと勉強しないとダメだと思っています。IJTも新品を扱うゾーンへ出展しますが、数年は勉強だと思って、新品に関する出展企業や来場者と情報交換できたらいいなと思っています。
また、中古品市場もいつまでも順調ではないと予測しています。供給量も減ってくるだろうし、中国の方の好みの傾向も変化してきている。そういったトレンドはIJTに出展していると肌で感じます。将来を見据えて、中古品もやりながら、新品に力を入れていきたいと考えています。

藤田: 日本の市場に対してはどうでしょうか。私たちもIJTで“日本ジュエリーベストドレッサー賞”表彰式を開催して、少しでも宝飾業界が元気になり、エンドユーザーへ消費喚起ができればと思っています。

渋谷: 現在は、私たちも取引の90%が海外ですが、日本の比率を高めたいとの思いがあります。だからこそ、日本人の好むカラーストーンやデザインのあり方を追求していこうとしています。もういちど藤田さんと出会ったときのように、洒落たブースをつくってやろうと考えています。今は、私の妻が社長ですが、若い社員たちを中心に、SNSなどを活用しながら、若い人たちに似合うジュエリーを届けていきたい。私のようなおじさんは奥へひっこんで(笑)。

藤田: これから事業を発展させていくうえで、私たちに何かご要望はありますか?

渋谷: RX Japanさんは、IJT以外にもたくさんの国際見本市を開催していますよね。他業界のなかでも、独自のやり方で勝っている企業があるはずです。そういう成功事例に何かブレイクスルーのヒントがあると思う。藤田さんが関わっているほかの国際見本市での、成功事例を紹介してほしいし、私も足を運んで見てみたい。また、私たちはIJTで中古品を主にやってきました。その知見や経験から、新品ゾーンに出展している企業さんとも、お互いにWin-Winになるような新たなビジネスチャンスが生まれるんじゃないかと期待しています。その関係性づくりやアイデアのもとになる情報の橋渡しを、藤田さんにはこれからも期待しています。

藤田:ありがとうございます。ジュエルアイマスというブランドが“IJTの顔”となり、渋谷社長が本物の宝石商だと胸を張れるように、私もいっしょに伴走します。

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