Interview #4

RX Japanの地方開催を加速させるきっかけ
2013年「関西 高機能素材 Week」の軌跡

かつてRX Japanの展示会場といえば、ほとんどの展示会が東京で開催すること多かったのですが、2013年「関西 高機能素材 Week」を皮切りに、今ではRX Japanの多くの展示会が大阪や名古屋などの地方で開催することとなりました。仕掛けたのは、当時入社7年目だった土屋 勝利さん。前例のない挑戦でしたが、一体どのように発想し、アイデアを形にしていったかを詳しく聞きました。

◆土屋 勝利さん プロフィール
2006年に新卒入社。
さまざまな展示会の国内企画営業担当を経て、執行役員のかたわら、現在は複数の展示会の事務局長を務める。
担当展示会は「高機能素材 Week」「COMNEXT」「JAPAN BUILD」など


メイド イン ジャパンの高品質な「素材」に注目
展示会の需要を取り戻す

―2013年 「関西 高機能素材 Week」開催の経緯を教えてください。

当時、これまで絶好調だった液晶TVの展示会が、LGやサムスンなど海外企業の台頭で勢いがなくなっていました。液晶に変わる次のテーマを考えていたとき、目に付いたのが液晶に使われている「素材」でした。液晶パネルメーカーが海外に移っても、使われている素材は日本でつくられており、メイド イン ジャパンの高品質な素材は国内外から需要があるはず、と考えました。

そこで、2012年4月に東京で「フィルム」「プラスチック」をテーマにした展示会を開催すると、それらが大当たりとなりました。活気のある初日の現場の様子から大阪でも開催したほうがいいと、「関西 高機能素材 Week」の構想が走り出しました。

翌日には、大阪の会場を抑え、その告知のためのちらしを印刷し、開催中の展示会で出展企業へのヒアリングを始めました。正直、最初は「ようやく復活したばかりなのに、大阪進出なんてうまくいくのだろうか」と不安もありましたが、準備を進めながら「やるからには、絶対に成功させたい」という気持ちが強くなっていましたね。

最終的に、展示会中の発表は見送ることとなりましたが、後日、しっかりリサーチをしたあと正式に、「関西 高機能素材 Week」のプロジェクトが立ち上がりました。


売約済み看板、会場直通のバス、フードコート、
新たな施策を次々と実現へ

開催決定の発表から約1年間出展企業を集めましたが、全然うまくいきませんでした。事前に100社の出展社を集めなければ失敗と言われているなか、出展を決めてくれた企業はたったの25社。同じやり方を続けていては、開催すら危ぶまれてしまうという状況に追い込まれました。

そこで編み出したのが、「売約済み看板」でした。これまで展示会業界のなかで、なんとなくタブーとされていた、次回開催予定の展示会のブース成約状況を誰でもわかるようにオープンにしたのです。

売約済み看板をさっそく東京で開催中だった展示会に持っていき、企業がボードを見ながら、その場で出展を決められる「出展申込コーナー」をつくりました。売約済み看板があることで、「もう決めている企業がいるんだ」「まだあそこは空いているのか」と、出展を検討する企業の後押しができればというのが狙いでした。

初めての挑戦でどうなるかわからなかったですが、狙いはドンピシャで当たり、たった3日間で50社が出展申込をしてくれました。出展企業が増えると興味をもってくれる企業も増えますので、そこからは雪だるま式に出展社が増えました。結果的には、初開催の場所で目標を超えた107社の出展企業を集めることができました。

また、出展企業集めと同時に、来場者を集めるための施策も必要でした。これまで東京以外で開催することが少なかったので、従来の東京展でのやり方では絶対に目標まで辿り着けそうになかったからです。

最大のネックは、開催場所である、「インテックス大阪」が大阪の中心地から離れていることです。電車で行く場合、大阪市内から約40分、何度か乗換えが必要です。そこで、RX Japanでバスをチャーターし、大阪駅から会場まで朝から約10分間隔でピストン輸送をすることにしました。

ほかにも、会場周辺に飲食店が少ない問題を解決するため、展示会場の1ホール分を臨時の飲食スペースにして、2,000席を用意し、キッチンカーを乗り入れてもらうようにしました。また、宿泊施設が少ないことがわかれば、近隣のホテルをリストアップしてご案内できるようにしたりと、問題を一つひとつ潰していきました。

そうやってつくり上げていった、2013年の「関西 高機能素材 Week」ですが、招待券の内容の半分が「バスが出ています」「飲食スペースがあります」「ホテルがあります」と、来場者の方に安心してもらうためのメッセージでした。どの施策も前例がなく、当日まで来場者の方々が来てくれるのか不安で仕方ありませんでした。しかし、フタを開けてみると、初回から約1万人の来場者が集まり、大成功となりました。


やるからには、絶対に成功させたい

―当時どんな想いで取り組んでいたかを、教えてください。

そもそも私は「関西 高機能素材 Week」に限らず、関わっているすべての展示会で、成功しなければやらないほうが良いと考えています。ここでいう「成功」は、RX Japanとしての目標達成だけでなく、出展企業、協力企業、来場者、そして開催地域と、すべてのステークホルダーにとってハッピーな状態をつくり出すことです。

たとえば、出展社にとって、いくら来場者が多く集まったとしても、会場近辺の飲食店が足りずに、出展社のスタッフの方々が食事を満足にできない状態では、必ずしもすべての方がハッピーとは言えません。そうなると、もしかしたら、当日の盛り上がりは思ったほどにはならないかもしれません。もし、大部分がうまくいっていても、見えないところで誰かが傷ついているのでは、当日の一体感を生むことができない、と私は考えます。
オリンピックやWBCで生まれる最高の盛り上がりは、すべてのステークホルダーがハッピーであることが前提です。
私はそのような大きなムーブメントをつくりたいと思っています。

―2013年の「関西 高機能素材 Week」の成功は、RX Japanにとってどんな意味があったと思いますか?


大阪でもこんな規模の展示会ができるんだと社員のみなさんに思ってもらえるきっかけになったと思います。これまで前例がなくて無理だと思っていましたが、私も含めて「東京じゃなくても、こんなに人を集めることはできるんだ」と自信になったのではないでしょうか。

▲インテックス大阪最寄り駅の「中ふ頭駅」前

また、RX Japanが掲げる、「展示会開催によって日本経済に貢献する」を本当の意味で理解する機会にもなったと思っています。

これまでのおもな開催地である東京は、すでに経済的に潤っている場所です。自分たちが経済成長に貢献している実感はそこまで強く持てませんでした。しかし、インテックス大阪付近は人通りが少なく、当時の経済規模は東京と比べて、非常に小さかったと思います。

それが、展示会の開催で活気が生まれました。実際に、イベントの最中に近くのお店の方から「すごいことが起きていますね。いったい何をやっているんですか?」と、聞かれたほどです。展示会の開催により、業界への大きな経済効果だけではなく、開催場所に経済効果をもたらすことも、主催者の大切な仕事のひとつなんだと、自分自身のなかで納得した瞬間でした。

▲大盛況のフードコート


日本が世界を牽引するためのハブをつくりたい

―最後に、土屋さんご自身の今後の展望を教えてください。

とにかく展示会そのものが好きなので、これからも展示会をつくり続けたいです。そのうえで自分にできることがあれば、RX Japanに貢献したいと考えています。

具体的に挑戦したいのは、本当の意味で、「国際的な」展示会をつくることです。会場の案内が基本的には英語で、出展企業が使う言葉も英語、来場者の半分以上が外国の方、といったイメージを持っています。

例えば、ドイツが戦後の復興のために国策として打ち出した「ハノーバーメッセ」などを、思い浮かべています。広大な敷地に見きれないほどたくさんの出展社が集まり、首相や政財界の要人達も訪れるような、そんな世界経済の中心地を日本に生み出したいです。

日本の高い技術力を世界に知らしめ、日本がリーダーシップを持って業界を牽引する、そのためのハブを生み出せればと思っています。

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